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血まみれ将軍の凱旋

ナイチンゲールの沈黙と並行して

前作であるナイチンゲールの沈黙の次に刊行された作品、これは時系列的に見ると実は前作で巻き起こった事件と同一の時間軸において展開される物となっている。水落冴子が吐血して、ドア・トゥ・ヘブンへの搬入に成功した後、忙しく業務を片付けていく田口の元へ一通の告発状が届けられるのだった。そこに記されていたのは救命救急センターに業務を担っている『速水晃一』が、医療業者と癒着関係にあるというものだった。

お膳立てされた展開に田口さんの心労がまた1つ追加される瞬間といえるでしょう。院長である高階に相談すると、この問題を倫理問題審査委員会である『エシックス・コミュニティ』へ委任することを決定した。ただこの委員会と田口はバチスタ事件以降浅からぬ因縁を抱えていたため、面倒事が減るどころか二重の意味で更に増していくのではないかと読者の心境も何処か重たいものへと変質していく瞬間だった。

その後委員会への事情をまとめた書類作成や不定愁訴外来としての仕事で多忙な日々を送る田口の前に、速水問題をまるでどこかで盗み聞いたように颯爽と登場する白鳥により、事態は複雑な展開を見せていくのです。というのも事の中心人物となる速水晃一は田口と白鳥両名を快く思っておらず、バチスタチームを解散させたと認識していたからだ。速水の指摘を白鳥は肯定も否定もせず、彼の気に触れるような物言いをやっぱりしてしまい、忙しさに見まわれながらも何とかフォローへと回っていく田口さんだったのでした。

田口・白鳥シリーズでは、基本汚れ役として田口さんが色々と奔走しなければならないのが決定的とも言える。

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速水晃一という医師について

さて、この話の主要人物として出てくる速水晃一という人物についてですが、救命救急において若きエースとして活躍しており、そのアダ名は『ジェネラル・ルージュ』と呼ばれているのです。こう呼ばれるのには訳がある、それはかつて発生したデパートの火災事故が起因となっていた。

当時デパートに訪れていた大勢の顧客が火にあおられてしまい、死者10数名・重軽傷者100人以上という大惨事をもたらした。そんな時、救命救急において対応を迫られたのが医師としてまだ3年も経っていない新米医師の速水だったのです。次々運ばれてくる患者の対応に追われるが、その当時はまだICUは7床しか用意できず、すぐさま満床となってしまった。けれど続々と運び込まれてくる患者の数に、速水はある決断をする。それは病院前スタッフを自分の指示下に置き、フロアにて臨時病室を作るよう指示して次から次へと到着する患者たちの対応へとさしあたって行くのです。

ただこの指示を出す前、経験の少ない医師だった速水は自分のすることに間違いはないだろうかという不安がよぎる。緊張からか青ざめていく顔色を見た看護師が彼を鼓舞し、陣頭指揮を取るようにと促したことにより、見事な対応で捌き切っていった。そうした経験もあって、速水は東城医大病院の救命救急センターにおいて絶対的な地位と自信を手に入れるようになる。彼が血まみれ将軍と呼ばれるようになった由縁はそこから来ていた。

本当の意味は

ただ作中においてジェネラル・ルージュと呼ばれる由縁については微妙に解釈が異なっている。そのまま意訳すれば血まみれ将軍となりますが、この点についても作中で説明されている。ルージュとは元々『口紅』という意味があり、直訳すると『口紅将軍』となります。想像すると思わず吹き出しそうになりますが、そもそもどうして血まみれ将軍と呼ばれるようになったかだ。

この作品では集中治療室へ勤務する看護師は皆、口紅を携帯する事が義務付けられていた。その理由としては、

生死を彷徨う患者が多く、口紅の臭いで現世に未練を感じ、生きようとする人がいるかもしれない。それならば看護師は患者が助かるためなら何でもする

という意味合いが込められていた。

これは世界観で表向きのルールとして伝播していきましたが、そうした由来を創りだしたのも速水という一人の医師だった。青ざめて意気消沈しかけた彼を発起させた看護師の存在、それは後にエースと呼ばれるまでに成長する彼を促したこと、青ざめた顔から赤色の顔つきで患者を助けていく様から『ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)』という異名が生まれた。

しかし当時を知らない人間は速水の活躍によって女性看護師が口紅を持参することになったということを知らずにいるのも、粋な作風となっているから面白い。

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お騒がせコンビの活躍はどこまでも

この作品では速水晃一さんは癒着の事実については証拠不十分として不問扱いされてしまいますが、毎月私的流用していた金銭問題により、病院を解雇されて別の病院へ行くこととなる。ただテレビドラマシリーズでは何の事はない、定番のレギュラーキャラクターとして採用されて最終章にもちゃっかり登場している。

原作では既に退場しているのだが、人気が沸いたことで原作とは違った展開が盛り込まれたのだろう。多分その頃速水晃一役をしていた俳優さんが押し出されていた事もあった、などと色々な視点での意見を添えておく。

劇場版もいいよ